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松下幸之助のことば

松下幸之助一日一話

仕事の知恵・人生の知恵

1999年4月15日初版発行PHP文庫

松下幸之助翁に関しては、改めて紹介する迄も無く、よくご存じのことと思います。よって経歴等は省いて幸之助氏の「一日一話」から言葉をセレクトして紹介いたします。その言葉は平易な言葉を選んで語られていますが、内容は奥深く、仕事・経営・生き方等々、人生の指標になる言葉ばかりです。尚、個人的に好きな言葉を勝手に選ばさせていただいてます。ご興味ある方は、読みづらい内容とかまた、高価な本とか云う事はありませんので、原本を読まれることをお勧めいたします。

  • 「宇宙根源の力は萬物を存在せしめそれら.が生成発展する源泉となるものでその力は自然の理法として我々お互いの体内にも脈々として働き一木一草の中までも生き生きと溢れている。」―運を開く言葉よりー

【六月の言葉】

*二日 主座を保つ

指導者と云うものはどんな時でも、自分自らこの様にしよう・こうしたいと云うものは持っていなくてはならない。そういうものを持った上で他人の意見を参考として取り入れる事が大事なのであって、自分の考えを持たずして只他人の意見に随うと云うだけなら、指導者としての意味はなくなってしまう。要は指導者としての主体性というか主座と云うものを確り持たなくてはいけないという事である。主座を保ちつつ他人の意見を聞きある種の権威を活用していく。そういう指導者であって初めてそれらを真に活かす事が出来るのだと思う。

*三日 自然に学ぶ

自然の営みには私心も無ければ捉われもないと思います。言ってみれば文字通り素直に物事が運び素直な形で一切が推移していると思うのです。一輪の草花にしても私心無く自然に花を咲かせているのです。そういった花の姿を見て勿論何も感じない人もいるでしょう。併し素直な心になりたいという強い願いを持っている人の場合には或は其処に何らかのヒントを見出すかもしれません。そういうことを考えてみるとお互いが素直な心を養っていく爲の一つの実践として大自然の営み自然の姿と云うものに触れてその素直さに学んでいくという事も大切だと思います。

*五日 商道徳とは

商道徳とは何かという事については難しい理屈もあるかもしれませんが極通俗的に考えれば、商売人としての心構えとでもいうべきものであろう。其れは昔も今も同じであり永遠に変わらないものの様な気がする。つまり商売人には商売人としての使命がある。だからその使命に誠実に従い只管此れを果たして行くという事である。私がやってきた電気屋であれば人々の役に立つものを開発する。しかも合理化を図り適正な利益を取りつつも尚安くなるよう努める。又配給も出来るだけ無駄をなくす。其れが商道徳と云うものでそれは他のどんな商売にも言えるのではないかと思う。

*六日 何事も結構

私は運命と云うものは不思議なものだと思います。人は皆夫々志を立てるのですが中々思い通りに行かないし実現しにくい。希望とは逆の道が自分にぴったり合って成功する場合もあるのです。だから私は余り一つの事をくよくよ気にしない方がいいのではないかと思います。世の中で自分が判っているのは一%程で後は暗中模索。始めから何もわからないと思えば気も楽でしょう。兎に角人間には様々な姿があっていいと思うのです。恵まれた生活も結構だし恵まれない暮らしも結構と云う気持ちが大切だと思います。

*八日 富の本質

時代によってと身に着いての考え方も変わってきます。これ迄は単に蓄積された物がと富と考えてきましたが経済の進歩した今日では。その物を生産し得る能力生産力こそが真の富とも考えられます。それでは生産力だけを増やせばいいかと云うと決してそうではありません。生産は必ず消費に相応じなければなりません。幾ら生産してもそれが消費されなければ何の値打ちも持ちません。即ち消費力があればこそ生産力があるのです。従って生産力と消費力のバランスをとりつつ増大させて行く事が富の増大で有り、繁栄の道も其処から生まれてくると云えるのではないでしょうか。

*九日 苦労を希望に還る

仕事のコツを体得するということは決して楽な業ではないと思います。相当精魂を込めてやらなければならないと思うのです。其れは矢張り一つの苦労だと考えられます。然し苦労であっても其れを遣らなければ一人前に成れないのだという事を青少年の間から、常に先輩に聞かされていますと其れは苦痛ではなくなってくるのです。其れは希望に変わるのです。ですからそのコツを体得する事に対して精魂を傾けるという事が出来てくると思います。その様に色々難しい問題にも心を励まして取り組んでいく処に自己の完成と云うか自己の鍛えがあると私は思います。

*十一日 小田原評定では

多くの会社では決起大会をやり反省すべき点や今後の目標を確認し合います。然しそれも斯うしなければならないという事がわかったと云うだけではいけない。実行が無ければいけません。実行が出来ない限りは百の決起大会を行っても其れは費用を使うだけ時間を使うだけに終わって仕舞います。昔の話に小田原評定という事があります。大群が攻めてくるという事に対して小田原城の人は評定に明け表情の暮れて遂に負けてしまったと云う話です。其れではいけない。評定は一回でよい後は実行だ。そうしてこそ初めて成果が挙げられるのです。一にも実行に二も実行です。

*十三日 寛厳宜しきを得る

指導者は所謂寛厳宜しきを得る事が出来る様心掛ける事が大事だと思う。優しいばかりでは人々は安易に成り成長しない。厳しさ一方でも畏縮してしまい伸び伸びと自主性を持ってやると云う姿が生まれてこない。だから寛厳宜しきを得る事が大切な訳であるが只これは厳しさと寛容さを半々に表すと云う事ではない。厳しさと云うものは為るべく少ない方がいい。二十%の厳しさと八十%の寛容さを持つとか更には十%は厳しいが後の九十%は緩やかである然しそれで十分人が使えると云う様な事が一番望ましいのではないだろうか。

*十五日 批判は後でよい

賢い人は伴すれば批判が先に立って目前の仕事に没入しきれない事が多い。此の為折角優れた頭脳と知恵を持ちながら批判ばかりして結局は簡単な仕事も満足に出来ない事がある。処が逆に人が見れば詰らないと思われるような仕事にもバカの一つ覚えと云われるぐらいに全身全霊を打ち込む人がいる。此の姿は全く尊く見ていても頭が下がる。仕事に成功するかしないかは第二の事、要は没入する事である。批判は後でよい。兎に角一心不乱に成る事だ。斯うした努力は必ず実を結ぶと思う。其処からものが生まれずして一体どこから生まれよう。

*十六日常識を破る

私達を取り囲んでいる常識と云うものは想像を遥かに越す根強さを持っています。併し私達はその常識を尊ぶと共に時には常識から自分を解放する事が必要だと思います。そして其の為にはやはり強い熱意が要請されます。熱意の滾って居る処、人は必ず新しい道を開きます。常識では考えられない事を遣ってのけ運命を切り開き新しい発明発見をします。常識を破るのです。常識は大事でありやぶるが為に常識外れた事をするのは、世の中を乱し周囲に迷惑を及ぼすだけです。そうではなくて熱意の発する処には次々と新しい着想が生まれ必然的に常識が破られていくのです

*十九日 美と醜

私の自宅の近くに水のきれいな池がある。水面に周囲の樹々の姿を映し誠に風情がある。処がこの池が一頃雨が降らなくて底の大半を露出してしまう迄になった。移すべき何物も無く醜い底を露呈するばかりである。美の半面には醜があるーそんな思いである。お互い人間も是と同じ事ではなかろうか。美と醜とが相表裏している処に人間の真実がある。とすれば美の面の巳に捉われてその反面の醜を責めるに急なのは人間の真実と云うものを知らないものである。温かい寛容の心を持って接し合う事がお互いに明るく暮らす為の一番大事な事ではなかろうか。

*二十日 言うべき事を言う

部下を持つ人は自分一人だけの職務を全うすればいいのではなく、部下とともに仕事の成果全体を高めていかなくてはなりません。其の為には矢張り部下に対して誠意を持っていうべきことを言い導くべきことは導いていくことが大切です。注意すべき時に注意したら文句を言ってうるさいからと云う様な事を考えて云わずに放っておくと云う様な事ではいけません。部下が為すべき事は矢張り毅然として要求し、そしてそれを推進していくと云う事に対しては断固としてやらなければならない。そういうことをしない上司は部下は却って頼りなさを感じるものです。

*二二日 知識はあっても

先般あるお店で金庫の扉がガス溶接機で焼き切られて中から金を盗まれたと云う事件がありました。ガス溶接の知識を利用して扉を溶かした訳です。そういう泥棒がいるのです。都筑は幾ら持っていても人間の心即ち良心が養われなければ、そういう悪い方面に心が働き知識は却って仇を為すと云う様な感じがします。今日新しい知識が無ければ生活に事欠くと云う位知識は大事なものです。其れだけに知識に相応しい人間人心と云うものを育てる事が非常に必要な事ではないかと思うのです。

*二四日 歴史の見方

私は最近お互いの歴史に対する態度の中に何か人間の醜さとかそういった裏の面を強調し過ぎる面があるのではないかと云う事が気に為っている。今日の姿を作っているのは歴史である。そして今後の歴史と云うものは我々が祖先が営々と努力を積み重ね前進してきた姿なり、子孫に残した遺産なりをどの様に受け取り生かすかによって変わってくるのである。そういう意味から歴史の長所短所其の儘を認識しいい面はどんどん伸ばしていかなくてはならない。興味本位にこれを扱うことなくもっと美しい面も同時に見るようにしたいと思うのである。

*二六日 冷静な態度

人間と云うものは誰しも困難に直面すると恐れたり動揺したりするものである。指導者としても人間だから時に不安を感じ思案に余るのは当然であろう。併し内心で感じても其れを軽々に態度に出してはいけない。指導者の態度に人は敏感なものである。其れはすぐ全員に伝わり全体の士気を低下させる事に為ってしまう。だから指導者たるものは日頃から事に当たって冷静さを失わない様自ら心を鍛えなければならない。そしてどんな難局に直面した場合でも落ち着いた態度で、それに対処するよう心掛ける事が究めて大切だと思うのである。

*二八日 身も心もそして財産も

人間将来の事は判らないけれども少なくとも今現在の貴方は入社した動機はどうであるにせよ、一応生涯をこの会社に託そうと決心して身も心も会社に打ち込んでいると思う。そこで更に一歩進んで自分の財産迄も打ち込めないものかどうか。例えば極端に言うと全財産を叩いて貴方の会社の株に換える様な心構えとしては会社と心中する位の気持ちであって欲しいと思うのである。そういう心構えで有れば必ずや仕事の成果と云うものは非常に上がるであろうし又そういう姿は会社からも高く評価されると思うのである。

*二九日 諫言を聞く

指導者が物事を進めていくに当って皆から色々な意見や情報を聞くのは当然の姿である。そしてその場合大事なのは自分にとって都合のいい事よりも寧ろ悪い事を多く聞く事である。つまり賞賛の言葉順調に進んでいる事柄についての情報よりも、ここはこうしなくてはいけないと云った諫言なり悪い点を指摘する情報を努めて聞くようにしなければならない。処がそうした情報は中々指導者の耳に入ってきにくいものだ。だから指導者は出来るだけそうした諫言なり悪い情報を求め皆が其れを伝え易い様な雰囲気を創る事が大切なのである。

松下幸之助のことば

松下幸之助一日一話

仕事の知恵・人生の知恵

1999年4月15日初版発行PHP文庫

松下幸之助翁に関しては、改めて紹介する迄も無く、よくご存じのことと思います。よって経歴等は省いて幸之助氏の「一日一話」から言葉をセレクトして紹介いたします。その言葉は平易な言葉を選んで語られていますが、内容は奥深く、仕事・経営・生き方等々、人生の指標になる言葉ばかりです。尚、個人的に好きな言葉を勝手に選ばせていただいてますので、ご興味ある方は、読みづらい内容とかまた、高価な本とか云う事は有りませんので、原本を読まれることをお勧めいたします。

  • 「受け身の人生から自発的積極的な人生への転換です。ダラダラと続いていると思うのは其の連なりの中の節を見過ごしているからで、だから心も改まらなければ姿勢も改まらない。大事なことは此の節を見分け自覚しその節々で思いを新たにすることである」―「運を開く言葉」より

【十一月の言葉】

*一日 人の世は雲の流れの如し

青い空にゆったりと白い雲が流れていく。常日頃慌ただしさの儘に意識もしなかった雲の流れである。速く遅く大きく小さく白く淡く高く低く一時も同じ姿を保っていない。。崩れるが如く崩れざるが如く一瞬一瞬その形を変えて青い空の中程を様々に流れていく。之は将に人の心人の定め運命に似ている。人の心は日に日に変わっていく。そして人の境遇も復昨日と今日は同じではないのである。喜びも佳悲しみも又吉し人の世は雲の流れの如し。そう思い定めれば其処に復人生の妙味も味わえるのではないだろうか。

*三日 日本人としての自覚と誇り

国破れて山河在りと云う言葉が有ります。例え国が滅んでも自然の山河は変わらないと云う意味ですが、山河は亦我々の心の故郷と共言えましょう。歴史に幾変転はあっても人の故郷を想う心には変わりはありません。此の国の祖先が培ってきた伝統の精神、国民精神も又変わることなくお互い人間の基本的な心構えであると思います。我々は日本と云う尊い故郷を持っています。此れを自覚し誇りとして活動する其処にはじめてお互いに納得の行く動きが起こるのではないでしょうか。日本人としての自覚や誇りの無い処には日本の政治も経済もないと思うのです。

*五日 大器晩成と云う事

能く世間ではあの人は大器晩成型だ等と云いますが、その場合どちらかと云えばあまり褒めた様には使わない事が多いようです。詰り今はまあまあだけれどもその内に何とか一人前になるだろうと云った調子です。併し私は此の大器晩成と云うのはもっと大事な意味を持っているのではないかと思うのです。真の大器晩成と云うものは人生は終生勉強であると云う考えを持って、菟と亀の昔話の様に一歩一歩急がず慌てず日々精進し進歩向上して行く姿ではないかと思います。其う云う姿を目指す事がお互いに大切だと思うのです。

*六日 部下の為に死ぬ

経営者に求められるものは色々ありましょうが、自分は部下の為に死ぬ覚悟があるか如何かが一番の問題だと思います。そう云う覚悟が出来ていない大将であれば部下も心から敬服して本当にその人の為に働こうと云う事にはならないでしょう。経営者の方もそう云うものを持たないと妙に遠慮したり怖れたりして社員を叱る事も出来なくなります。其れでは社内に混乱が起こる事にも成ってしまいます。

ですから矢張り経営者たる者はいざと云う時には部下の為に死ぬと云う程の思いで日々経営に当たるのでなければ力強い発展は期し得ないと思うのです。

*八日 振子の如く

時計の振子は右に振れ左に振れる。そして休みなく時間が刻まれる。其れが原則であり時計が生きている証拠であると云って好い。世の中も亦人生も斯くの如し。右に揺れ左に揺れる。揺れてこそ世の中は生きているのである。然し此処で大事な事は右に揺れ左に揺れると云っても、その揺れ方が中庸を得なければならぬと云う事である。右に揺れ左に揺れるその振幅が適切適正であってこそ其処から繁栄が生み出されてくる。小さく振れてもいけないし大きく振れてもいけない。中庸を得た適切な触れ方揺れ方が大事なのである。

*九日 利害得失に捉われない

利害得失を考える事はある程度止むを得ないけれども、余り其れに囚われ過ぎと自分の歩む道を誤る事にも成りかねない。学校を撰ぶにしても卒業して仕事を選ぶ場合でもそうである。誰もが給与とか待遇の事を先に考える傾向があるが、矢張り自分には何が一番適しているだろうかと云う事を能く考えるべきだと思う。

必ずしも大会社へ入ったから幸せかと云うとそうとばかりは言えない。人によっては中小企業へ勤めて却って用いられ人生の味と云うか綾を知る尊い体験が出来て、人間としても成長すると云う事が往々にしてあるからである。

*十四日 自分を戒める為に

松下電器では昭和八年に遵奉すべき五大精神を定め発表して以来毎日の朝会で唱和している。(十二年に二精神を加え七精神)是は勿論社員としての心構えを説いたものであるが、それと同時に私自身を鞭撻する爲のものである。皆で確認し合った使命であっても何もなければ遂遂忘れて行勝ちになる。だから毎日の仕事のスタート時に噛締める。言ってみれば自分への戒めである。人間は頼りないものである。如何に強い決意をしても時間が経てばやがてそれが弱まってくる。だからそれを防ぐ為には常に自分自身に言い聞かせる。自分に対する説得誡めを続けなければならない。

*十六日 成功するまで続ける

何事に拠らず志を建て始めたら少々上手くいかないとか失敗したと云う様な事で、簡単に諦めてしまってはいけないと思う。一度や二度の失敗で挫けたり諦める様な心弱い事では本当に物事を為し遂げて往く事は出来ない。世の中は常に変化し流動しているものである。一度は失敗し志を得なくても其れにめげず辛抱強く地道な努力を重ねて行く内に周囲の情勢が有利に転換して新たな道が開けてくると云う事もあろう。世に云う失敗の多くは成功する迄に諦めてしまう処に原因が有る様に思われる。竿後の最後迄諦めてはいけないのである。

*十八日 民主主義と勝手主義

民主主義と云うものは自分が善ければ人はどうでもいいと云うような勝手なものでは決してないと思うのです。今日の日本の民主主義は我儘勝手主義である。勝手主義を民主主義の如く解釈している人が随分あるのではないかと云う様な感じがします。民主主義と云うものは自分の権利も主張する事は認められるが、それと同時に他人の権利也福祉也と云うものを認めて往かなければならない。そういう事をしなかったならば法律によってぴしっと遣られると云う様な非常に戒律の厳しいものだと思います。其れがあって初めて民主主義と云うものが保ち得るのだと思うのです。

*二十日 寛容の心で包含

世の中には好い人ばかりではない。相当良い人もいるが相当悪い人もいる訳です。ですからきれいな人、心の清らかな人そう言う人ばかりを世の中に望んでも実際には中々その通りにはなりません。十人居たら其の中に必ず尾ならざる者正ならざる者も入ってくる。そういう状態で活動を進めているのがこの広い世の中の姿ではないでしょうか。其処に寛容と云う事が必要になってきます。力弱き者力強き者があるならば両者が互いに包含し合って其処に総合した共同の力が生み出されてゆく。そう云う処に我々人間の生き方があるのではないかと私は思うのです。

*二一日 心を解き放つ

自由な発想の転換が出来ると云う事は指導者にとって極めて大事な事である。然し発想の転換と云う事は盛んに言われるが実際は中々難しい。自ら自分の心を縛ったり狭めている場合が多いのである。だから大事な事は自分の心を解き放ち拡げて行く事である。そして例えば今迄表から見ていたものを裏から見、又裏を見ていたものを表も見てみる。そう云った事をあらゆる機会に繰り返していく事であろう。そうした心の訓練によって随所に発想の転換が出来る様にしたいものである。

*二二日 弁解より反省

仕事でも何でも物事が上手くいかない場合必ず其処に原因がある筈である。だから上手くいかなかった時にその原因を考える事は同じ失敗を重ねない為にも極めて大切である。そのことは誰もが承知しているのであるが、人間と云うものは往々にして上手くいかない原因を究明し反省するよりも、斯う云う状況だから上手くいかなかったのだ。あんな思いがけない事が起こって其れで失敗したのだと云う様に弁解し自分を納得させてしまう。原因は自分が招いた事であると云う思いに徹してこそ、失敗も経験も生かされてくるのではないだろうか。

*二五日 人間としての務め

命を懸けるー其れは偉大な事です。命を懸ける思いがあるならばものに取り組む態度と云うものが自ずと真剣に成る。従ってものの考え方が一新し創意工夫と云う事も次々に生まれてきます。お互いの命が生きて働くからです。そうすると其処から私たち人間が繁栄していく方法と云うものが無限に湧き出てくると云えるのではないでしょうか。この無限に潜んでいるものを一つ一つ探し求めていくのが人間の姿であり、私達お互いの人間としての務めであると思います。もうこれで云い決してそう考えてはならない。其れは人間としての務めを怠る人だと私は思います。

*二七日 人間としての成功

人には各各皆異なった天分特質と云うものが与えられています。言い換えれば万人万様皆異なった生き方をし、皆異なった仕事をする様に運命づけられているとも考えられると思うのです。私は成功と云うのは此の自分に与えられた天分を其の儘完全に生かし切る事ではないかと思います。それが人間として正しい生き方であり自分も満足すると同時に、働きの成果も高まって周囲の人々をも喜ばすことに為るのではないでしょうか。そういう意味からすればこれこそ人間としての成功と呼ぶべきではないかと考えるのです。

*三十日 精神大国を目指して

今日我が国は経済大国と云われる迄に成りましたが、人々の心の面精神面を高めると云う事に就いては、兎角等閑にされ勝ちだった様に思います。此れからは経済面の充実と合わせてお互い国民の道義道徳心良識を高め、明るく生き生きと日々の仕事に励みつつ自他共に活かし合う共同生活を造り上げていく。合わせて日本だけでなく海外の人々牽いては人類相互の為の、奉仕貢献が出来る豊かな精神に根差した国家国民の姿を築き上げていく。その様な精神大国道徳大国とでも呼べる方向を目指して進む事が、今日国内的にも海外的にも極めて寛容ではないかと思うのです。

一日一話 松下幸之助

五月の言葉

ほととぎす啼きつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる 後徳大寺左大臣

三日 法律は国民自身の為に

民主主義の政治の元に於ける法律は国民お互いの暮らしを守り、夫々の活動の成果を得易くし一人一人の幸せを生み高めていく処に究極の目的なり存在意義があるのだと思います。言ってみれば国民が国民自身の幸せを実現して行く為に自ら法律を制定すると云う仕組みになって要る訳です。従って国民お互いがこういう法律を軽視し無視するような姿が仮にあるとするならば、それは云わば自分自身を軽んじ自分の尊厳を失う事にも通じると思います。其事をお互い国民は正しく認識し合い法律を常に正しく守りあってゆく事が肝要だと思います。

  • 今日は憲法記念日 
  • memo―法治国家の在り方尊厳―とは

七日 自らを教育する

人間の教育には勿論立派な校舎も必要で有環境も必要でしょうが其れ已に頼っていてはならないと思うのです。行政の充実により成程環境は段々良くなってくるでしょう。併しそういう環境が作られたとしましてもその中で其々の人が自らを処して自らを教育してゆく。自問自答しつつより高きものに為って往く事を怠っては決して立派な人間は生まれてこないと思うのです。今日より明日、明日より明後日と自らを高めてゆく処に人間の成長があり復其処から立派な人間が生まれてくるのではないでしょうか。

  • 2012年(H24)茨木筑波竜巻発生
  • Memo―自己成長

十日 熱意あれば

人の上に立つ指導者管理者としての要諦というものは色々考えられるけれども、その中でも最も大事なものの一つは熱意ではないかと思う。非常に知恵才覚に於いて人に優れた首脳者であってもこの会社を経営しようという事に熱意が無ければその下にいる人も。この人の下では大いに働こうという気分に成り難いのではないだろうか。そうなっては折角の知恵才覚も無きに等しいものに為ってしまう。自らは他に何も持っていなくても熱意さえ保持していれば知恵ある人は知恵を力ある人は力を才覚ある人は才覚をだしてそれぞれに協力してくれるだろう。

  • 今日は愛鳥の日
  • Memo-事の為る根底➡指導者の熱意

十五日 業界の信用を高める

どんな商売もそうでしょうが自分ぽ店が発展繁栄していくには、そのお店の属している業界全体が常に健全で世間の人々から信用されていることが非常に大事だと思います。もしそうではなく業界の中に不健全な店が多ければあの業界はダメだ信用できないと云うことに為って、その業界に属する個々の店も同じ様な評価を世間から受け商売は成り立っていきにくくなるでしょう。ですからお互い商売を進めていく上で自分の店の繁栄を図る事は元より大事ですがそれと同時に他の店とも上手く協調して業界全体の共通の信用を高める事を配慮する事が究めて大事だと思うのです。

  • 1932年(S7)5.15事件
  • 1972年(S47)沖縄返還
  • Memo-業界の健全化➡ネットワークビジネス

十六日 人間観を持つ

人間の幸せを高めていく為には先ず人間が人間を知る事が大切だと思う。言い換えれば人間とはどういうものでありどう云う歩み方をすべきであるかと云う正しい人間観を持つという事である。そうした人間に対する正しい認識を欠いたならば如何に努力を重ねても其れは往々にして実りの無いものに為ってしまい時には却って人間自身を苦しめる事にもなりかねない。そういう意味に於いてが先ず正しい人間観社会観と云ったものを生み出し、それに基づく指導理念を打ち立てていくならばそれは極めて力強いものに為ってくると思うのである。

  • 1968(S43)十勝沖地震M7.8
  • 今日は旅の日
  • Memo―認識・観察眼

二十日 公平な態度

国に於ける法律の適用には万が一にも不公平があってはならないが、会社や団体に於ける規律や規則についても是と復同じ事が言える。会社の規則と云うものは一新入社員であろうと社長であろうと等しく此れを守り其れに反した時には等しく罰せらるという事で初めて社内の秩序も保たれ士気も上がるのである。だから指導者は常に公平という事を考えなくてはならない。利害とか得失、相手の地位強弱に拘りなく何が正しいかと云う所から公平に賞すべきものは賞し罰すべきものは罰すると云う姿勢を遵守しなければならない。

  • 今日は世界計量記念日
  • Memo-指導者の基本姿勢➡現代の政治企業トップの在り方には疑問あり

二二日 感心する

同じ様に人の話を聞いても中々良い事を言うなぁと感心する人もあればなんだ詰らないと思う人もいる。どちらが好ましいかと云うと勿論話の内容にも依るだろうがいいなぁと感じる人の方に、より多くその話の内容から仕事に役立つような何かヒントを得て、新しい発想をすると云ったプラスの価値が生まれてくるだろう。一寸した事だけれども人生とか事業の成否のカギは案外こうした処に在るのではないかと思う。人の意見を聞いて其れに流されてはいけませんが、お互い先ず誰の意見にも感心し学び合うという柔軟な心を養い高めていきたいものである。

  • 今日はガールスカウトの日
  • 2009年(H21)ネットワーク事業セーラ登録

二八日 失敗を素直に認める

例えどんな偉大な仕事に成功したと云う人でも何の失敗もしたことがないと云う人はいないと思います。事に当って色々失敗してその都度其処に何かを発見しそう言うことを幾度となく体験しつつ段々成長していき遂には立派な信念を自分の心に植えつけ偉大な業績を為し遂げるに至ったのではないでしょうか。大切な事は何等かの失敗があって困難な事態に陥った時に其れを素直に自分の失敗と認めていくという事です。失敗の原因を素直に認識し是は非常に好い体験だった尊い教訓になったと云う処迄心を開く人は後日進歩し成長する人だと思います。

  • 今日はゴルフ記念日
  • Memo―体験の認識➡プラス思考・志向

なんでも、人の話を否定的にとる人がいる。本人は意識していないのだろうが、これは、本人にとっても大きな損失になっているということに、早く気付いてほしいものである。松下幸之助翁は22日の章で、此の事を非常に大切な事と教えている。