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小倉百人一首・上

お正月も段々と近づいて来ています。早いものですね。つい先日まではやれ猛暑日だ、猛暑の新記録だと暑さに辟易していたような感じですが・・

お正月と云えば「かるたとり」・・今はこの様な遊びをするご家族も少なくなってきてい小倉百人一首上るようですが、日本の伝統の一つ❣❢大事に残していきたいものです。

と云う事で、今回は、田辺聖子さんの「小倉百人一首上・下」に収録されている短歌・長歌を百人一首を中心に全部拾ってみました。

歌だけを拾い上げ、面白い軽妙なタッチの解説本文、歌人に関わるエピソードは省いています。興味ある方は原本をご覧いただければと思います。

ではでは・・・

秋の田のかりほの庵のとまをあらみわが衣手は露にぬれつつ  天智天皇

(秋田かる仮庵を作りわが居れば衣手寒く露ぞおきける     詠み人知らず

(ほのぼのと春こそ空に来にけらし天の香具山霞たなびく     後鳥羽院

春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山      持統天皇

(春過ぎて夏来たるらし白妙の衣ほしたり天の香具山       持統天皇

あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む 柿本人麻呂 

(思へども思ひもかねつあしひきの山鳥の尾の長きこの夜を   詠み人知らず

(ほのぼのと明石の浦の朝霧に島がくれゆく船をしぞ思ふ    柿本人麻呂

(ほのぼのとまこと明石の神ならば我にも見せよ人丸の塚    詠み人知らず

田子の浦に打ち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ 山部赤人

(田子の浦ゆ打ち出でてみれば真白にぞ富士の高嶺に雪は降りける 山辺赤人

(天地の分れし時ゆ神さびて高く貴き駿河なる富士の高嶺を
天の原ふりさけ見れば渡る日の影も隠らひてる月の光も見えず
白雲もい行きはばかり時じくぞ雪は降りける語り継ぎ言い継ぎ
ゆかむ富士の高嶺は 【長歌】                  山辺赤人

(日本の大和の国の鎮めともいます神かも宝ともなれる山かも   高橋虫麻呂

奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の声聞くときぞ秋はかなしき     猿丸太夫

かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞふけにける   中納言家持

天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山にいでし月かも     安倍仲麻呂

わが庵は都のたつみ鹿ぞすむ世をうぢ山とひとはいふなり    喜撰法師

花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに 小野小町

(うたたねに恋しき人をみてしより夢てふものは頼み初めてき   小野小町

(思いつつ寝ればや人のみえつらむ夢としりせばさめざらましを  小野小町

(今はとてわが身しぐれにふりぬれば言の葉さへにうつろひにけり 小野小町

(人を思ふこころ木の葉にあらばこそ風のまにまに散りも乱れめ  小野貞樹

(あはれなりわが身の果てや浅緑つひには野辺のかすみと思へば  小野小町

これやこの行くも帰るも分かれては知るも知らぬも逢坂の関   蝉丸

(世の中はとてもかくても過ごしてむ宮もわら屋も果てしなければ 蝉丸

(逢坂の関の嵐のはげしきに盲ひてぞゐたる世を過ごすとて    蝉丸

わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人のつり舟  参議篁

天つ風雲のかよひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ    僧正遍照

(世をそむく苔の衣はただひとへかさねばうとしいざ二人寝む   僧正遍照

筑波嶺のみねより落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる   陽成院

陸奥のしのぶもぢずりたれゆゑに乱れそめにしわれならなくに 河原左大臣

(早苗とる手もとや昔しのぶずり               松尾芭蕉

(春日野の若むらさきのすりごろもしのぶの乱れかぎり知られず 読み人知らず

君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ   光孝天皇

たち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かばいま帰り来む 中納言行平

(わくらばに問う人あらば須磨の浦に藻塩たれつつ侘ぶと答へよ 在原行平

(腰蓑の上からみつめる中納言                読み人知らず

ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは  在原業平

住の江の岸に寄る波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ    藤原敏行

難波潟みじかき芦のふしの間も逢はでこの世をすぐしてよとや 伊勢

わびぬれば今はたおなじ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ 元良親王

(ふもとさへあつくぞありける富士の山嶺の思ひのもゆる時には  元良親王

(初春の初子の今日の玉箒手に取るからにゆらぐ玉の緒    読み人知らず

(極楽の玉の台のはちす葉にわれを誘えゆらぐ玉の緒     京極御息所

今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ちいでつるかな  文屋康秀

(雪ふれば木毎に花ぞ咲きにけるいづれを梅とわきて折らまし  紀友則

(秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる   藤原敏行

(わびぬれば身を浮草の根を絶えて誘ふ水あらばいなむとぞ思ふ 小野小町

月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身一つの秋にあらねど  大江千里

(燕子楼中霜月ノ色秋来タッテ只一人ノ為ニ長シ        李白

(おほかたの秋来るからに我が身こそ悲しき物と思ひしみぬれ  大江千里

(照りもせず曇りも果てぬ春の夜の朧月夜ぞめでたかりける   大江千里

(あやなくも年の緒長く独りしてあくがれわたる身とやなりけむ 大江千里

このたびは 幣もとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに   菅原道真

(去年ノ今夜 清涼ニ侍ス 秋思ノ詩篇 独リ断腸
恩賜ノ御衣 今ココニアリ 捧ゲ持チテ毎日 余香ヲ拝ス    菅家

名にし負はば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな 藤原定方 

(大和には鳴きてか来らむ呼子鳥象の中山呼びぞ越ゆなる    読み人知らず

小倉山峰の紅葉葉こころあらば今ひとたびの御幸待たなむ   貞信公

みかの原わきて流るるいづみ川いつみきとてか恋しかるらむ  藤原兼輔

山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば   源宗于朝臣

心あてに折らばや折らむはつ霜の置きまどはせる白菊の花   凡河内躬恒

(月夜にはそれとも見えず梅の花香をたづねてぞしるべかりける 凡河内躬恒

(照る月を弓張としもいふことは山の端さしていればなりけり  凡河内躬恒

(白雲のこのかたにしもおりゐるは天つ風こそ吹きてきぬらし  凡河内躬恒

(ふたつ文字牛の角文字直ぐなもじゆがみ文字とぞ君はおぼゆる 延政門院  

有明のつれなくみえし別れより暁ばかり憂きものはなし    壬生忠岑

(風吹けば峰にわかるる白雲の絶えてつれなき君が心か     壬生忠岑

(春の日の雪間をわけておひいでくる草のはつかに見えし君かも 壬生忠岑

朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里にふれる白雪     坂上是則

(み吉野の象山の際の木ぬれにはここだもさわぐ鳥の声かも   山辺赤人

(み吉野の山の白雪ふみ分けて入りにし人のおとづれもせぬ   壬生忠岑

(み吉野の山の白雪ふみ分けて入りにし人の跡ぞ悲しき     静御前

(しづやしづ賤のをだまき繰りかへし昔を今になすよしもがな  静御前

(み吉野の山の白雪つもるらしふるさと寒くなりまさるなり   坂上是則

山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり   春道列樹

(流れゆくわれは水屑となりはてぬ君しがらみとなりてとどめよ 菅原道真

(あづさ弓春の山辺を越えくれば道もさりあへず花ぞ散りける  紀貫之

(昨日といひ今日とくらしてあすか川流れてはやき月日なりけり 春道列樹

久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ      紀友則

たれをかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに     藤原興風

(かくしつつ世をや尽くさむ高砂の尾の上にたてる松ならなくに 詠み人知らず

(われみても久しくなりぬ住之江の岸の姫松幾世経ぬらむ    詠み人知らず

(世の中に古りぬるものは津の国の長柄の橋とわれとなりけり  詠み人知らず

(今こそあれわれも昔はをとこ山さかゆく時もあり来しものを  詠み人知らず

人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける    紀貫之

(夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ   清原深養父

(夏の夜の臥すかとすれば時鳥鳴くひと声にあくるしののめ   紀貫之

(冬ながら空より花の散り来るは雲のあなたは春にやあらむ   清原深養父

(その人ののちといはれぬ身なりせば今宵の歌をなづぞ詠ままし 清少納言

白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける   文屋朝康

(秋の野におく白露は玉なれやつらぬきかくる蜘蛛の糸すぢ   文屋朝康

(蓮葉のにごりにしまぬ心もてなにかは露を玉とあざむく    僧正遍照

(萩の露玉に貫かむととれば消ぬよし見む人は枝ながらみよ   詠み人知らず

(あさみどり糸よりかけて白露を玉にも貫ける春の柳か     僧正遍照

(置くと見るほどぞはかなきともすれば風に乱るる萩のうは露  源氏物語

(秋風にしばしとまらぬ露の世をたれか草場の土とのみ見む   源氏物語

忘らるる身をば思はず誓ひてし人のいのちの惜しくもあるかな 右近

(我を頼めて来ぬ男角二つ生いたる鬼となれさて人に疎まれよ
霜雪あられ降る水田の鳥となれさて足冷たかれ・・・ (梁塵秘抄) 詠み人知らず

浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき   参議源等

(戯奴(ワケ)がため吾手もすまに春の野に抜ける茅花ぞ食して肥えませ 紀女郎

(吾が君に戯奴は恋ふらし給ひたる茅花を喫めどいや痩せに痩す 大伴家持

忍ぶれど色にいでにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで  平兼盛

恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか 壬生忠見

契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山浪越さじとは    清原元輔

(君をおきてあだし心をわが待たば末の松山浪も越えなむ    詠み人知らず

(いかばかり思ふらむかと思ふらむ老いて別るる遠き道をば   清原元輔

(波こゆるころとも知らず末の松待つらむとのみ思ひけるかな  源氏物語

あひみてののちの心にくらぶれば昔はものを思はざるけり   藤原敦忠

逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし 藤原朝忠

(君恋ふとかつは消えつつ経るものをかくても生ける身とやみるらむ 清原元真

(たぐへやるわがたましひをいかにして儚き空にもてはなるらむ  藤原朝忠

(ふりすてて今日はゆくとも鈴鹿川八十瀬の波に袖はぬれじや   源氏物語

あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな 謙徳公

由良の戸を渡る舟人かぢを絶え行方も知らぬ恋のみちかな    曾禰好忠

(日暮るれば下はをぐらき木のもとのもの恐ろしき夏の夕暮れ    曾禰好忠  

(うとまねど誰も汗こき夏なれば間ええ遠に寝とや心へだつる    曾禰好忠

八重むぐらしげれる宿のさびしきに人こそみえね秋は来にけり  恵慶法師

(塩竈にいつか来にけむ朝なぎに釣する舟はここによらなむ    在原業平

風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな   源重之

(人の世は露なりけりとしりぬれば親子の道に心おかなむ     源重之

(さもこそは人におとれる我絵ならめおのが子にさへ後れとるかな 源重之

(旅人のわびしきことは草枕雪降る時の氷なりけり        源重之

(昔みし関守もみな老いにけり年のゆくをばえやはとどむる    源重之

(みちのくの安達が原の黒塚に鬼こもれりと聞くはまことか    平兼盛

みかきもり衛士の焚く火の夜は燃え昼は消えつつものこそ思へ  大中臣能宣

君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな    藤原義孝