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一日一話 松下幸之助

十二月の言葉

山里は冬ぞ寂しさまさりける                        人目も草もかれぬと思へば    源宗宇朝臣

二日 忍ぶべきを忍ぶ

誠心誠意良いものを進めたけれども用いてくれないと云うので憤慨し、是は相手が暗愚だから仕様が無いと自棄になって結局打ち壊しになってしまうと云う事が儘有る様です。併しそう云う事では私は大した事は出来ないだろうと思います。用いてくれなければ時を待とう。是だけ説明して駄目だと云うのは是は時節が来ていないのだ―そう考えてじっと忍耐していく処から無言の裡に知らしめると云う様な強い大きな誠意が生まれてきます。そして其の内に相手が自ら悟る事にもなって其れが非常な成功に結び付く事にも成りましょう。

  • 今日は原子炉の日 
  • Memo-終戦詔書➡義を貫く至誠・安岡正篤

五日 恩を知る

恩を知ると云う事は人の心を豊かにする無形の富だと思います。猫に小判と云う事が有りますが折角の小判も猫にとっては全く価値の無いものに過ぎません。恩を知る事は謂わばその逆で鉄を貰って其れを金程に感じる。詰り鉄を金に換える程のものだと思うのです。ですから今度は金に相応しいものを返そうと考える。皆がそう考えれば世の中は物心共に非常に豊かなものに成っていくでしょう。最もこの恩とか恩返しと云う事は決して要求されたり強制されるものでなく、自由な姿でお互いの間に理解され浸透する事が望ましいと思います。

  • 今日はバーミューダートライアングルの日 

九日 世界に誇れる国民性

同じ日本人でも細かく見れば考え方や性格など実に色々な人がいる訳ですが、然し復一面には日本人には日本人としての共通の特性と云うか日本人の民族性国民性と云うものが矢張り有る様に思います。日本独特の気候や風土の中で長い間過ごしている内に、例えば日本人特有の繊細な情感と云うものが次第に養われてきたと云えるでしょう。日本人の国民性の中にも反省すべき点は少なくありませんが、特に勤勉さとか器用さとか恵まれた気候風土と長い歴史伝統によって養われてきた斯う云う特性には、世界にも大いに誇り得るものが有る様に思うのです。

  • 今日は障碍者の日
  • Memo―折角の日本人の特性も近年気候風土の変化と相俟って悪い方向へ流れている様➡トインビー歴史の研究「三代で感性は変化する」

十三日 命を懸ける

人多くして人無しと云う言葉を昔ある先輩から聞いたことがある。考えてみると会社経営に於いても普通の状態では間に合う人は大勢いる。処がさて大事に臨んで間に合う人はと云うと極めて少ないものである。では如何云う人が大事の時に役に立つのか。その道の知識とか経験が大きな比重を持つ事は当然だが只其れだけでは駄目の様に思う。その上に何が必要かと云うと生命を賭す気構えである。と云っても今日では本当に命を捨てると云う事は極めて少ないが、いざと云う時には命を懸けてという気構えを何時の場合でも持っている人が本当に大事に役立つ人だと思うのである。

  • 今日は双子の日 
  • Memo-安岡正篤「百朝集」➡六然の教え

十七日 昭和維新の志士として

今から百年程前に明治維新と云うものが在りそしてその後日本の姿が世界各国から認識され評価される様に迄なりました。然し今日に至って日本は復大きな転換期を迎えていると思います。亦日本ばかりでなく目を転じて世界を見てみると世界の情勢も必ずしも安定しているとは言えません。そう云う情勢を考える時、私は今は昭和維新の時であると考えねばならないのではないかと思います。明治維新は日本の開化であった昭和維新は世界の開化に努力する時期であると思うのです。そして我々日本人が昭和維新の志士を買って出なくてはならないのではないかと思うのです。

  • 今日は飛行機の日
  • Memo-平成維新の志士は如何に?

二一日 信用は得難く失い易い

我々が何か事を成してい場合信用と云うものは極めて大事である。謂わば無形の力無形の富と云う事が出来よう。けれども其れは一朝一夕で得られるものでは無い。長年に渡る誤りのない誠実な行いの積み重ねがあって初めて次第次第に養われていくものであろう。併しそうして得られた信用も失う時は早いものである。昔であれば少々の過ちが在っても過去に培われた信用に拠って直ちに信用の失墜とはならなかったかも知れない。然し一寸した失敗でも致命的に成りかねないのが、情報が一瞬にして世界の隅々まで届く今日と云う時代であ1/30る。

・ Memo―積善陰徳・過剰反応

*二二日 小事を大切に

普通大きな失敗は厳しく𠮟り小さな失敗は軽く注意する。併し考えてみると大きな失敗と云うものは対外本人も十分考え一生懸命やった上でするものである。だからそう言う場合には寧ろ君そんな事で心配したらあかんと一面励ましつつ、失敗の原因を共々研究し今後に活かして行く事が大事ではないかと思う。一方小さな失敗や過ちは概ね本人の不注意や気の緩みから起こり、本人も其れに気が付かない場合が多い。小事に捉われる餘大二を忘れてはならないが小事を大切にし小さな失敗に対して厳しく𠮟ると云う事も一面必要ではないか。

  • 今日は労働組合法制定記念日
  • Memo-𠮟り方のポイント

二六日 旨くて早くて親切

私が丁稚奉公をしていた頃楽しみの一つはうどんを食べる事だった。その当時は子供心にもあのお店のうどんは美味しいし素うどん一杯のお客でも大切にしてくれると感じある一軒の店ばかりに通ったものである。其のうどん屋は旨くて親切でそして早く作ってくれた。現代に於ける商売企業のコツも此のうどん屋さんのやっていたことと何一つ変わらない。立派な商品を早くお届けし親切丁寧に使用法を説明する―斯うした心掛けで商売をするならば私は必ずそのお店は成功すると思う。又そういうお店が成功しなかったら不思議である。

  • 今日はプロ野球誕生の日
  • Memo-サービスの本質

二九日 理想ある政治を

政治には理想が大事です。日本をこうするんだと云う一本筋が十たものが無ければいけない。そう云うものが今は見られません。その場を適当に納めてやっているそういう状態です。未だ日本が世界で二・三十番目と云う事であるなら追いつけ追い越せと云う事でも目標も出来てきますが、すでに世界一・二位を争う様になっている以上其処により高い目標理想を打ち出す必要があると思います。例え世界で一番と云う事になったとしても日本にはもっと大きな役割があるんだからと云う事で、より高い理想を持ち力強い政治を行って行く事が必要だと思うのです。

  • 今日は仕事納め
  • Memo―現代日本の政治安倍政権は如何

山本七平人望の研究―近思録➡天下の事を公にすと雖も若し私意を用いてこれを為さば便ちこれ私なり」

*三一日 総決算

十二月は総決算の月。この時に当り一年の歩みを振り返りお互いの心のけじめをつけたいものです。此の一年良かったことは善かった悪かったことは悪かったと、素直に自分で採点しなければなりません。そしてこの一年は決して自分一人の力で歩んだものではありません。自分で気付かない処で人々の協力を得又思わぬ処で迷惑を懸けている事もあると思うのです。そんな周囲の人々の協力に対しては有難く感謝し迷惑を懸けたことに対しては謙虚に謝罪したいと思います。そうした素直な自己反省こそ次の新しい年の時分の成長にプラスする何かを必ず与えてくれると思うのです。

  • 2017年(H29)北九州テーマパークスペースワーヅド閉館 
  • 今日は大みそか 年惜しむ
  • 高浜虚子➡去年今年貫く棒の如きもの

29日項目のMemoに山本七平の著作から文言を引用して安倍政権の事に触れているがこのメモは安倍政権下に書かれたものと云うことになる。これを投稿したときは岸田政権の時で、既にご存じのように安部元首相は選挙応援演説中に奈良で兇弾に斃れた後である。犯人の言によれば政治信条等に反対しての凶行ではなくいわば、私怨によるものということらしい。政治家は一点の曇りのなきよう、念には念を入れて身の潔癖を図るべき存在でなければならないのではと考えさせられた次第。