南洲翁のことば

廟堂に立ちて大政を爲すは天道を行ふものなれば、些とも私を挾みては濟まぬもの也。いかにも心を公平に操り、正道を蹈み、廣く賢人を選擧し、能く其職に任ふる人を擧げて政柄を執らしむるは、即ち天意也。夫れゆゑ眞に賢人と認る以上は、直に我が職を讓る程ならでは叶はぬものぞ。故に何程國家に勳勞有る共、其職に任へぬ人を官職を以て賞するは善からぬことの第一也。官は其人を選びて之を授け、功有る者には俸祿を以て賞し、之を愛し置くものぞと申さるゝに付、然らば尚書(○書經)仲之誥(チュウキコウ)に「徳懋(サカ)んなるは官を懋んにし、功懋んなるは賞を懋んにする」と之れ有り、徳と官と相配し、功と賞と相對するは此の義にて候ひしやと請問せしに、翁欣然として、其通りぞと申されき。         西郷隆盛    遺訓

今まで安岡正篤師の百朝集を中心に倫理観や生き方・考え方の参考になるような言葉を選んでそれに感想など加えてきましたが、これからも基本的には変わりません。が、ちょっと幅を広げて、今話題の渋沢栄一翁の言葉や、松下幸之助、中村天風といった先人たちの言葉の中から、其の時節時節に応じて選らんでいきたいと思っています。

今回は、西郷隆盛の遺訓その第一節、よく引用される言葉を挙げました。現今の政治家の皆様、特にその中枢に入る方々は必須の書簡だと思いますが、今どきの政治家で知っているような人いるのかなと思うような、昨今の政治家の在り様に思えてなりません。早くこのような志高い人が現れることを願ってやみません。

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