百朝集第55章 六錯
奢を以て福有と為す。詐を以て智有と為す。貪を以て為す有と為す。怯を以て守有と為す。争を以て気有と為す。瞋以て威有と為す。 金襴生「格言聯壁」
世事は往々顛倒錯覚され易い。豪奢な生活必ずしも幸福ではない。が世人は奢即福と錯覚しがちである。深省すべき問題である。威張りたがる人間に限ってよく人を𠮟りつける。六錯実に世間の欲情を穿っている 安岡正篤解
百朝集第56章 六知
静坐し然る後平日の気浮けるを知る 黙を守りて然る後平日の言躁がしきを知る事を省いて然る後平日の心忙しきを知る 戸を閉ざして然る後平日の交濫りなるを知る 欲を寡なうして然る後平日の病多きを知る 情に近づきて然る後平日の念刻を知る 金襴生「格言聯壁」
今の知識人は外物を知る事を知って、内心を知る事を知らない。技術者は外物を操作することを知って、自己を左右することを知らない。我々はこういう風に時々反省し、操作して、往々失い易い真実の自己と生活とを保全しなければ為らぬ。 安岡正篤解
金欄生とは 中国清時代の篤行の長者で思想家。生没は不詳日本で云えば江戸時代中期位の人物と云うことでしょうか。金欄生の言葉も安岡正篤師のことばも現代当に、現在の日本の状況を見透かしているかのようなことば。でも、こういうことは今ではあまり、重要視されていないような世情になってしまっているようですね。ヒトの根本にかかわるところがお座成りにされているところに、現代の歪の原因があるのかもしれませんね。